カム・サンデイ
チャーリー・ヘイデン,ハンク・ジョーンズ
ジャズ・ピアノの老大家が生前、郷地で録音した最期のスタジオ・セッションは、95年の『スピリチュアル』以来15年ぶりとなるチャーリー・ヘイデンとのデュエット。と言うは易し、行なうは難し。これではもはや、ふたりの交感が霊感含みとしか思えないって、そのことは全作同様、霊歌や賛美歌を協演することばかりが理由ではない。アビー・リンカーンはこのデュオを聴いて、「聴き手にとってはくつろいだ雰囲気がありながらも考えさせられる、得るところの大きな体験となろう」。速さやスリルなど技巧の土俵でなら、目の覚めるようなワザの応酬はこれっぽっちもないに等しい。その代わりこれを聴くと、世に数多ある同じ編成が映す音景の奥行きが、少々平たく見えてくる。亡くなる数ヵ月前の巨匠はこの時91歳。年輪が渦動を生じて楽曲の真意を吸い上げていく感じに、背筋が寒くなる瞬間も訪れた。ヘイデンもまた、多言を要せず多くを語る、低音王ぶりを遺憾なく発揮する。(CDジャーナル)
15曲